吐き気止めはどれが安全? プリンペラン・ナウゼリン・その他の薬の違いをわかりやすく解説します
[2025.11.27]
吐き気や胸のムカムカがあるとき、病院でよく処方されるのが「制吐剤(せいとざい)」です。
特に多いのが
・プリンペラン(メトクロプラミド)
・ナウゼリン(ドンペリドン)
の2つですが、「どっちが安全?」「妊娠中は使えるの?」という質問をよくいただきます。
今日は、医師として事実だけを整理し、わかりやすく解説します。
1. 代表的な吐き気止めとその特徴
制吐剤はいくつか種類がありますが、日常診療でよく使うのは次の4つです。
プリンペラン(メトクロプラミド)
・胃の動きを助けて、吐き気をおさえる薬
・風邪の胃腸症状・つわり・食あたりなど幅広く使われる
・妊娠中・授乳中でも「必要時に慎重に使える」薬
ナウゼリン(ドンペリドン)
・胃の動きを助ける薬
・吐き気より「胃が重くて動きにくい」タイプに向いている
・2025年5月20日付の添付文書改訂で、妊婦への「禁忌」が解除されました(現在は有益性が危険性を上回る場合に投与)
・心電図(QT延長)への影響があるため、最低用量・最短期間で使うことが原則です
ガナトン(イトプリド)
・いわゆる「胃の動き改善薬」
・胃もたれ中心の症状に使う
・妊娠中・授乳中は安全性データが十分でない
オンダンセトロン(5-HT3拮抗薬)
・化学療法の吐き気でよく使われる強めの制吐薬
・海外では妊娠悪阻(つわり)にも使われるが、日本では「安全性未確立」の位置づけ
2. 妊娠中に使えるのは?
日本では、妊娠中に使える吐き気止めとして実績があるのは
プリンペラン(メトクロプラミド)
です。
大規模研究でも先天異常の増加は認められていません。
一方で、
・ナウゼリン → 2025年5月20日付の添付文書改訂で妊婦への禁忌が解除され、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」に変わりました。「妊婦には絶対に使えない薬」という説明は現在は正確ではありません。ただし、データの厚みという点では今もプリンペランが第一に検討されます
・オンダンセトロン → 日本では安全性未確立(海外では使われる)
・ガナトン/レグナイト → 妊婦データが不足
となっています。
3. 授乳中はどれが使えるの?
授乳中は、赤ちゃんに薬が移行するかどうかがポイントです。
・プリンペラン
→ 母乳中に移行することが報告されています。国内の添付文書では「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」とされています。授乳を続けたい場合は、薬の選択と授乳のタイミングを主治医と相談してください。
・ナウゼリン
→ 国内の添付文書では、プリンペランと同じく「授乳の継続又は中止を検討すること」とされ、投与する場合は大量投与を避けることとされています。
・その他の薬
→ 国内では安全性データが不十分。
授乳中にどちらを使うか、あるいは授乳を一時中止するかは、主治医と相談して決めることになります。
4. では、どっちを使えばいい?
整理すると、次のようになります。
・妊娠中・授乳中も含めて幅広く使いやすい → プリンペラン
・胃の動きが悪いタイプの吐き気に向いている → ナウゼリン(妊娠中は禁忌ではなくなりましたが、使うかどうかは医師が個別に判断します)
・胃もたれ中心 → ガナトン、レグナイト(妊娠・授乳では避ける)
・つわりが重い場合 → プリンペランを中心に、必要に応じて医師が調整
吐き気の原因はさまざまで、同じ薬でも効き方に差があります。
妊娠中・授乳中は特に、安全性に基づいて慎重に選びます。
5. まとめ
・吐き気止めは種類によって作用と安全性が違う
・妊娠中に使う吐き気止めとして、データの積み重ねが多いのは プリンペラン
・ナウゼリンは2025年5月に妊婦への禁忌が解除され、必要と判断されれば妊娠中にも使えるようになった(授乳中は、添付文書上「授乳の継続又は中止を検討すること」とされている)
・胃もたれ中心、ストレス性の胃不調などでは別の薬を使うこともある
症状によって最適な薬は変わるため、迷ったときはぜひ相談してください。
参考文献(エビデンス)
- 各製剤添付文書(メトクロプラミド、ドンペリドン、イトプリド、アコチアミド)
- ACOG Practice Bulletin: Nausea and Vomiting of Pregnancy
- EMA安全性レビュー(Domperidone – QT延長)
- LactMed(授乳中の薬物情報データベース)
- Matok et al. Metoclopramide in pregnancy: meta-analysis(催奇形性なし)
ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから
https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874
※2026年9月21日追記・修正:ドンペリドン(ナウゼリン)は2025年5月20日付の添付文書改訂で妊婦への禁忌が解除されました。改訂前の記載を現行の内容に更新しています。
※2026年10月2日 訂正:授乳中の扱いについて、添付文書の現行の記載(2026年8月改訂)に合わせて修正しました。
この記事の深掘り版をnoteに公開しています。
外来で実際によく聞かれる質問・よくある誤解・受診時の流れまで踏み込んで書きました:
吐き気止めの選び方、妊娠中・授乳中はどうすればいい?|note